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みかどんとくれあ

初はブ文章です。


出演者は紅愛・ミカどん・いのりん。
まさかの学園祭の時の話です。
挿絵つき。







・薬指にひとつ・


やや日が傾いて、わたしプロデュースの
メイドネイルサロンも盛況のまま幕を閉じようとしていた。
道具などを片付けていると、少しだけ疲れが顔を出した。


「あん?もう閉めちまったのか」
「!」

低めの声に心臓が跳ねて、反射的に振り返る。

そこには、白いコートを窮屈そうに羽織っている姿があった。
ああ、だから今少しこの教室の空気がざわめいたんだ。
この人はどこにいても嫌でも目立ってしまい、
その場の空気を自分の色に変えるから。


「な、によ…玲」
まだわたしはドキドキしている。
わたしは…それが驚きと、また違うものが混ざっていることを知っていた。


「や」
と、玲はさりげなく指を見るしぐさをした。

「後でちゃんとしてもらうって、言ったから」

…そうだ。
昼頃に紗枝と冷やかしに来た時、玲の爪はベースを塗っただけで。
『後でしてもらう』なんて言って、早々に去ってしまったんだ。
…その時言ったことなんて、わたししか覚えてないと思ってたのに。


「…それで、来てくれたの?」
「それ以外何があんだよ」
私から視線を逸らし、
めんどくさそうに髪をかき上げてぶっきらぼうに告げられた。

「でももうやってねえみたいだな。じゃあ…」
「待って!」
去ろうとする背中を咄嗟に引き止めた。


「…今日、夜、時間あるなら…」


+++


ドアが開かれると、ラフな普段着の玲が少し疲れた様子でいた。
目をぱちぱち動かして少し大きくした。

「んだよ、別に今こっちから向かおうと思ってたのに」
「み、みのりが寝てるのよ。玲の声通るでしょ」
嘘をついた。
同室のみのりが寝ていることは本当だけど、
いてもたってもいられなくて玲の部屋に来てしまったのだ。

どんな色にしようとか。
玲はイメージよりも色が白くて、爪は細長くて綺麗な形をしてるから、とか。
立体的にしたりあまり派手な色にしたら学校生活で気になるかも、とか。
そんなことばかり考えてて。

「まあいいや。入れよ」

玲の殺風景な部屋に迎え入れられて、何故か緊張するのを感じた。


+++


「……」
「……」

もう一度ベースを塗り直していると、沈黙が耳を痛くする。
心臓が落ち着かなくて、それが聞こえてしまいそうで。

「何か喋りなさいよ。静か過ぎて落ち着かない」
「は?おめーが動くなっつってんだろが。
 喋ったら気が散るかと思って黙ってやってんのに」
「…じゃあ…音楽でもかけてよ」
「…ったく。注文の多いネイルサロンだな」

玲はベースをまだ直していない方の手で小さめのコンポを動かした。
洋楽らしきよくわからないロックの歌が聞こえてきた。
でも、聞き覚えある。


…この歌、まだ聴いてるんだ。
よっぽど気に入ってるんだ。
何の歌か聞いたら、教えてくれるのかな。
CDを貸してくれたりするのかな。


ベースが乾くまで、わたしは声には出せない気持ちが
シャボン玉のように浮かんでは消えた。


「…塗るわよ。この色でいい?」
私は二本のネイルを差し出した。
ピンクがかったベージュと、クリアな赤めのオレンジ。

「あん?何でもいいよ」
空いてる方の手でリズムを取りながら、玲はそっぽを向いたまま答えた。
…まあいいや。乗り気な答えを期待していたわけじゃない。


わたしはとにかく、気持ちを落ち着けて爪の裏にネイルを塗り始めた。
「ちょ、そこ裏だぞ」
「ここを塗らないと爪の先から剥げやすいのよ」
「…へえー。…早く言えよ」

ちょっと先走ってしまった自分に照れているのを隠そうとしているの、丸わかり。
でも触れたら拗ねて手を引っ込めそうだからからかうのを我慢する。
今は、玲に触れていると同時に玲の爪を綺麗にしたい自分がいるから。

ベージュのネイルを何度か重ね塗りして、
ムラなく綺麗に仕上がったらなんだかいつもの自分の爪が
上手く行ったときよりもずっと嬉しかった。

玲も、爪を見て綺麗だと思ってくれているように思う。
時折感じる視線が、今は少しだけ誇らしい。
やっぱり照れくさいけど。

img324.jpg



玲の静かな息遣いが。
わたしの殺した呼吸が。

玲の細くて長い、だけどすこし骨ばった指が。
わたしの丸くて弱そうな小さな指が。


「じゃあ次、これ」
「また塗るのかよ」
「そうよ」
「あ、そ」

クリアオレンジなんだけど、塗ったらピンクに見えて、
それが逆に可愛くて気に入ったネイル。
これを段階を分けて塗って、グラデーションにしていく。

指先だけ見ていたら、本当に繊細で。
見上げたらぶっきらぼうな口調で
ちょっとやさぐれたみたいな目つきが想像出来ないくらい。


「…玲の」
「え?」


「……なんでもない」



玲の手、本当に綺麗ね。



ただそれだけの言葉が恥ずかしくて言えなかった。



両方の薬指にだけアクセントでシールを乗せる。
ストーンの方がバランスがいいんだけど、立体的になるのを抑えた。

…わたしは。
左手の薬指にだけ、こっそりハートのシールを乗せた。
誰にも意味なんて理解されなくていい。
玲にあたしには似合わねえよなんて無神経なこと言われてもいいの。
ただの自己満足。


+++


トップコートを完全に乾かすまでこの言葉は言わない。

「はい、出来たわよ」

「…っだー。んだよ、ネイルアートってこんな長げえのかよ。肩凝った」
首をほぐしながら玲は爪を眺めた。
全体的に甘めのピンク。
ぱっと見だったら普通は透明のネイルだけを塗ったように
見えるくらいなんだけど、玲の指はやっぱり白くてもう少し目立った。
ピンクの可愛いネイルを見て、その顔が心なしか
いつもより柔らかいことを、わたしはやっぱり言わない。


「綺麗だな、ほんと。すげーよ紅愛」

にかって。
少年みたいに無邪気に笑うと、何でだかこんなに嬉しい。


「ありがと」


わたしもやっと素直に笑えた。
素直に嬉しかった。


「こんな可愛い色、合わねえけどさ」
「そんなことないわよ」
「…」


じっと。
…爪を見てる。


わたしは、玲のためにそれを選んだ。
玲に似合うと思って、それを選んだ。
玲が喜ぶと思って。


「でもやっぱり、綺麗だ」


「…っつ、次はちゃんと料金請求するわよ」
「はぁ?頼まねーよ」

顔が赤くなっているのがわかったから、
素早く片付けをして玲の部屋を去った。
ゆっくりしてけよ、なんて言われたけど、
明日もあるしお互い疲れてるでしょ、と言うのが精一杯だった。


ばたんっ。
大きな音を立てすぎたけど、みのりはピクリともしなかった。

「…ん…ねこやき……」
寝言までお約束なみのりの顔を見ると何故だか力が抜けてへたり込んだ。
テーブルの上に置いてある鏡に
半分だけ映り込んだわたしは勿論真っ赤だった。

「……なんなのよ、本当に」


+++


「玲ー…あら?」
「んだよ」
「それ、爪」
「ん?ああ、昨日紅愛にやってもらった」

img325.jpg

「…へーえ、似合ってるじゃない、こういう色結構合うのね」
「そうか?」
「かわいいわよ」
「かくし芸的な意味でか」
「ふふっ、ううん」

「でもふっつーにすげえよな、これ」
「うん。なーんか、…一生懸命考えましたーって、感じ」
「そうか?結構シンプルだと思うけどな」
「そうね、シンプルね」
「は?どっちだよ」

「玲は知らなくていいことよ」
「お前はそうやっていっつもはぐらかすのな」




おわり。


ちなみに「自分で出来る簡単ネイルアート」→
「グラデーションネイル・シロップネイル」の#042がモデルです。
私自身ネイルは全然しないのですごく新鮮な気持ちになりました。
爪の裏とか全然知らなかったし。


おまけ。

img326.jpg
いのみかって同じ背なのです。
この角度から絡ませにくい。なんかおかしなことになった。

img327.jpg
盛り盛りのミカどんは嫌だなって思ってから
妄想した盛り盛りミカどんなんですが、
彼女のアイデンティティ!
ケータイ小説に影響された柳生だと思いました。
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